フォワード・デプロイド・エンジニアの仕事を Claude Code で練習する
現場に入り込んで動く仕組みを作るFDEの仕事を、ヒアリングから導入レポートまで Claude Code で練習する方法をまとめました
「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」という言葉を最近よく見かけるようになりました。新しいAI職種のように聞こえますが、中身はとても日本的な仕事だと私は感じています。現場に入り込み、業務を誰よりも理解し、実際に動く仕組みを置いて帰る。この記事では、その練習を Claude Code を使って今週から始める方法をまとめます。
FDEとは何をする人か
もともとは Palantir が、エンジニアを顧客の組織に常駐させたことから生まれた呼び名です。いまこの役割が注目されているのは、AIの導入で同じ問題があらゆる会社で起きているからです。モデルの契約は一日で終わります。でも、経理の月次締めや営業事務の中でAIが本当に使われるようになるまでには、何か月もかかります。その時間の大半は、技術ではなく「業務が実際にどう回っているか」を知ることに使われます。
日本の会社で働いたことがある方なら、この感覚はわかると思います。業務フロー図に書かれている手順と、現場で実際に行われている手順は、たいてい違います。Excelのバケツリレー、紙で回る申請書、特定の担当者の頭の中にしかないルール。FDEは、そこに入っていって動くものを作る人です。
正直に言うと、エンジニア職です
FDEの求人は、実務でコードを書ける人を求めています。ここはごまかせません。ただ、評価される力の半分はヒアリングと観察です。相手が言葉にしない手間に気づけるか、新しいツールに警戒している現場の空気を読めるか。デザイナー、コンサルタント、社内SEや業務改善の担当者は、この半分をすでに持っていることが多いです。
私は16年以上デザインの仕事をしてきましたが、ユーザーが本当の問題を話してくれることはほとんどありません。話してくれるのは症状です。症状から実際の業務にたどり着き、その業務に合わせて作る。FDEの核はそこにあります。
練習のしかた
練習に必要なのは、面倒な業務を抱えている人がひとりと、数日の夜の時間だけです。同僚でも、家業を手伝っている友人でも構いません。
- 現場を見る。説明を聞くのではなく、実際に作業している横に20分座ります。コピー&ペースト、画面の切り替え、「ここで別のファイルを確認して」という瞬間をすべてメモします。
- 測れる痛みをひとつ選ぶ。週に何時間かかっているか、月に何件ミスが出るか。数字にできないものは後回しです。
- Claude と計画する。空のフォルダで Claude Code を起動し、Shift+Tab でプランモードに切り替えてからメモを貼ります。
- いちばん小さい版を作る。一週間以内に相手の手元に届けます。見た目は後で整えれば十分です。
- もう一度測る。一週間使ってもらい、最初の数字と比べます。
- 導入レポートを書く。A4一枚です。
ヒアリングのあと、プランモードで私ならこう頼みます。Claude は日本語のメモでもそのまま読めるので、走り書きのままで大丈夫です。
ある人の業務を横で見せてもらいました。以下はそのメモです。
1. 実際に行われている手順を番号付きで書き直してください。
時間がかかっている箇所と、ミスが起きやすい箇所に印をつけてください。
2. メモの中であいまいな点があれば、推測せずに先に質問してください。
3. 一週間で作れる、いちばん小さな改善ツールを提案してください。
必要なデータやアカウント、あえて手作業で残す部分、
効果の測り方も書いてください。
4. まだコードは書かないでください。
メモ:
[ここにメモを貼る]
質問に答え、大きすぎる提案は削ってから計画を承認します。作ったあとは、テストやサンプルデータでの実行結果を Claude に見せてもらってから相手に渡してください。
日本の職場で練習するときのコツ
- 個人情報は抜いてもらう。実データのほうが練習になりますが、氏名や取引先名は伏せたCSVをもらいましょう。
- 人が判断する部分を決めておく。取引先へのメール送信や、承認ボタンを押す操作はツールに任せない、と最初に合意しておくと、現場の不安がぐっと減ります。
- 稟議を想定して書く。社内で正式に使ってもらうなら、費用、リスク、効果の三点が説明できる必要があります。導入レポートはそのまま稟議の添付資料になります。
- 二週間後に見に行く。使われていなければ理由を聞きます。この会話がいちばん学びになります。
導入レポートのひな形
# [業務名] 導入レポート
## 対象
担当者、チームの人数、業務の頻度
## 導入前
実際の手順(例外処理や裏ワザも含めて)
基準となる数字:週○時間 / 月○件のミス
## 作ったもの
何をするツールか(一段落)、使った技術
あえて手作業で残した部分とその理由
## 導入後
同じ方法で測った○日後の数字
担当者のひとこと
## 次にやること
改善案を二つ、全社展開する前に必要な対策
業種も相手も違うレポートが三本あれば、どんな資格よりもあなたの力が伝わります。
技術面の学び方
作る側のスキルは、Anthropic の無料講座 Claude Academy でかなりの部分をカバーできます。講座は英語ですが、わからない箇所は Claude に日本語で説明してもらえば問題ありません。まず Claude Code 101、次に Claude Code in Action、社内システムとつなぐ段階になったら Introduction to Model Context Protocol の順がおすすめです。
最初の一歩は、技術ではなく人探しです。今日、身近な誰かに「毎週いちばんやめたい作業は何ですか」と聞いて、20分だけ横で見せてもらう約束をしてください。そこからすべてが始まります。