見守りは異変に気づくためのもの。では、薬の袋は誰が読むのか
65歳以上の一人暮らしは 2020年に 672万人。見守りサービスの多くは異変に気づくための仕組みですが、毎日の困りごとはもっと小さく、薬の袋の文字や役所からの封書です。自社で開発した Glimpse でできること、ご家族への導入のすすめ方、そしてできないこと。
離れて暮らす親のために、見守りサービスを検討しているご家族は多いと思います。ポットの使用状況、センサー、定期的な電話。どれも「何かあったとき」に気づくための仕組みです。
それは大切です。ただ、毎日の困りごとの多くは、もっと小さいところにあります。
薬の袋に書いてある飲み方。区役所から届いた封書。新しい炊飯器のボタン。牛乳の賞味期限。文字が小さくて読めない。でも、わざわざ誰かに電話して聞くほどのことでもない。一人暮らしだと、そこで止まります。
数字で見ると
2020年の国勢調査で、65歳以上の一人暮らしは 672万人でした。65歳以上の男性の 15.0%、女性の 22.1% です。2050年には男性 26.1%、女性 29.3% になると推計されています。
薬の数も多い。厚生労働省の統計では、2024年8月審査分の院外処方で、75歳以上の明細書の 23.1% に 7種類以上の薬が載っていました。7種類なら、名前も、量も、飲むタイミングも 7つです。
見えにくさについては、日本眼科医会が 2007年時点で視覚障害のある人を約 164万人と推計しています。そのうち約 145万人はロービジョン、つまり見えてはいるけれど細かい文字が読みにくい人です。半数が 70歳以上で、2030年には約 200万人になると見込まれていました。古い推計ですが、これより新しい全国の数字は見つけられませんでした。
小さな文字を、一人で読まなければならない人が、これだけいます。
スマホはもう手元にある
内閣府の国際比較調査では、日本の 65歳以上の回答者の 84.1% が、携帯電話やスマートフォンで家族や友人と連絡をとっています。端末はすでに台所にあります。難しいのは、アプリが求める入力、ログイン、確認画面のほうです。
Glimpse でできること
Glimpse Vision AI は、私が設計して開発した iPhone アプリです。カメラを向けて声でたずねると、声で答えます。日本語で聞けば日本語で答えます。ウェイクワードや文字入力は必要ありません。
たとえば、こういう使い方です。
- 薬局でもらった説明書にカメラを向けて「これは何て書いてある?」と聞く
- 「夕食後に飲むのはどれ?」と聞く
- 区役所からの封書、家電の表示、バスの時刻表を読んでもらう
- 「スペアキーはお隣さんに預けてある、と覚えておいて」と言っておく
「覚えておいて」と言ったことは、アプリを閉じても残ります。
スマホを持つ手が安定しない方には、Glimpse Glasses があります。私たちが自社でつくっているメガネです。たずねたときに小さなカメラが静止画を一枚撮り、答えはつるの中のスピーカーから聞こえます。耳の穴には何も入れず、レンズにディスプレイもありません。見て、たずねるだけです。iPhone とは Bluetooth でつながり、価格は一回払いの $150 です。
できないこと
- Glimpse は医療機器ではありません。しわのあるラベルや暗い場所では読み間違えることがあります。飲む量や飲み方については、薬剤師と説明書が基準です。答えがおかしいと感じたら、薬局に電話してください。
- 眼科の受診の代わりにはなりません。急に文字が読めなくなったなら、まず眼科を受診してください。
- 人の代わりにはなりません。ラベルを読む声は便利ですが、話し相手になったり、介護をしたりはできません。
- iPhone と通信環境が必要です。無料プランは 1日5分で、ラベルや手紙を何枚か読むには足ります。Glimpse Pro は 1日40分です。メガネも iPhone アプリが必要で、Android には対応していません。
ご家族へ、最初の一回は一緒に
最初の設定は、できれば会って一緒にやってください。無料アプリを入れて、その家の台所にあるものにカメラを向けて、最初の質問は本人にしてもらう。
最初の答えが返ってきた瞬間に、使い方の説明はほとんど要らなくなります。自分の質問だと、納得するのがずっと早いのです。
高齢者向けのサービスをつくっている方へ
介護事業者、薬局、自治体、家電メーカー。高齢の利用者に向けて何かをつくるとき、画面を増やす方向で考えがちです。大きな文字のモード、説明文の追加、確認画面。
Glimpse をつくって感じたのは、逆のことでした。カメラと声だけにすると、説明書がほとんど要らなくなる。高齢の利用者がつまずくのは、たいてい画面の数と入力の多さです。
自社のサービスのどこに、声とカメラに置き換えられる手順があるか。そういう相談なら、具体的にお手伝いできます。
参考
- 厚生労働省 令和6年社会医療診療行為別統計(薬剤の使用状況)。院外処方で 75歳以上の明細書のうち 7種類以上は 23.1%(図14、令和6年8月審査分)
- 内閣府 令和8年版高齢社会白書 第1章 第1節・第2節。65歳以上の一人暮らし(令和2年 672万人)と将来推計
- 内閣府 令和8年版高齢社会白書 第1章 第3節。携帯電話・スマートフォンで家族・友人と連絡をとる 84.1%
- 日本眼科医会 視覚障害がもたらす社会損失額(2009年9月17日)。2007年時点の視覚障害者 約164万人、2030年に約200万人の推計
- Glimpse Vision AI(App Store)、glimpseai.jp