社員のMacに音声入力やAIアシスタントを入れる前に、確かめる5つのこと
音声入力や画面を読むAIアシスタントは、便利さより先に「何が外に出るか」を確認するべきです。自分でMac用のアシスタントを作ったときに決めた5つの基準を、導入を検討する会社向けに書きます。
「社員が音声入力やAIアシスタントを使いたがっているが、許可していいのか分からない」という相談を受けることが増えました。
気持ちはよく分かります。話すのは、打つより速いからです。スタンフォード大学の研究では、スマートフォンでの入力で、英語は音声がキーボードの2.93倍、中国語(ピンイン入力)でも2.87倍速いという結果が出ています。日本語は測られていませんが、かなを打って漢字に変換するという手間は、ピンイン入力とよく似ています。
一方で、声も画面も、会社の情報そのものです。
私は今月、東京で「ゆび」というMac用のアシスタントを作りました。右のOptionキーを押して話すと、カーソルの位置に文字が入ります。右のCommandキーを押して話すと、目の前のウィンドウを読んで、押すべきボタンを指さしたり、代わりに押したりします。
作る側として、最初に決めたのは機能ではなく「何を外に出さないか」でした。その基準は、導入を検討する会社がそのまま確認項目として使えます。
一つ目:声はどこで文字になるか
音声入力アプリは、音声をサーバーに送って文字にするものと、Macの中で文字にするものに分かれます。見た目は同じです。キーを押して、話して、離す。違いは裏側だけです。
サーバーに送る方式では、会議の内容も、取引先の名前も、話した瞬間に社外を通ります。
ゆびの文字起こしはMacの中で終わります。アップロードされる音声は0秒です。確認するときは、「音声がどこで処理されるか」をベンダーに直接聞いてください。利用規約の「学習には使いません」とは、別の話です。
二つ目:画面をどうやって見ているか
画面を手伝うAIアシスタントには、見る方法が大きく二つあります。スクリーンショットを撮って画像として送る方法と、アクセシビリティ情報を読む方法です。
アクセシビリティ情報とは、ボタンや入力欄の名前と位置の一覧で、VoiceOverなどの読み上げ機能が使っているものです。画像ではないので、写真や資料の中身まではまとめて送られません。
ゆびは後者だけを使います。スクリーンショットは撮らず、画面収録の権限も求めません。
社内で確認する方法は簡単です。システム設定の「プライバシーとセキュリティ」を開いて、そのアプリが「画面収録」を求めていないかを見てください。求めているなら、画面をそのまま撮れる状態です。
三つ目:外に出たものを、あとで確認できるか
画面の手伝いには、どうしてもAIモデルとの通信が必要です。だからこそ、何を送ったかを利用者自身が確認できることが大事です。
ゆびは、送った内容をMacの中に記録して、アプリの中で一覧できるようにしています。その記録自体はどこにも送りません。音声入力の文を整える機能は初期設定で切ってあり、入れた場合も送るのはテキストだけで、音声は送りません。
「何が送られたか分からない」アプリは、情報システム部門にとって説明のしようがありません。
四つ目:取り返しのつかない操作の前に止まるか
AIに「押して」と頼めるなら、次に考えるべきは、押してはいけないボタンです。
ゆびでは、送信、投稿、購入、支払、削除、予約といった言葉の近くにあるボタンは、必ず「はい」を待ちます。この判断はAIモデルではなく、アプリのコードで決めています。モデルがどれだけ自信を持っていても、ボタンに「送信」とあれば止まります。
そして、一回の「はい」で許されるのは一つの操作だけです。メールを一通送る許可で、三通は送れません。
導入前には、「誤って送信や購入をしたとき、何がそれを止めるのか」をベンダーに聞いてください。「AIが判断します」という答えなら、それは止まらないという意味です。
五つ目:絶対に読まない場所が決まっているか
ゆびは、パスワード管理アプリの中身を読みません。何を頼まれても読みません。
どこを読まないかが最初から決まっていて、それが説明できるか。これは技術の話というより、作った人の考え方の話です。
私の考え
音声入力やAIアシスタントは、禁止するよりも、条件を決めて使わせる方がいいと思っています。禁止しても、社員は個人の端末で使います。そちらの方がずっと見えません。
条件は上の五つで十分です。声はMacの外に出ない。画面は画像で送らない。送ったものはあとで確認できる。取り返しのつかない操作は必ず止まる。読まない場所が決まっている。
ゆびはmacOS 26とApple Siliconで動きます。音声入力は無料で無制限です。サイトで七つの使い方をそのまま試せますし、Mac版はこちらからダウンロードできます。
自社に合ったAIツールの選び方や、社内向けのツール作りについて相談したい場合は、お気軽にご連絡ください。